No.11 「削る」ということ 1984(昭和59)年5月号掲載


 日本の工作機械産業が1兆円産業になるのは時間の問題である―とブチあげてから、 もう6〜7年になりましょうか。
そして、今や工作機械産業に不況はありえない―と発表してから3〜4年になります。
これは、日本の工作機械産業に携わっている、いわゆるインサイダーの発言でした。

 しかし、海外に目を向けたとき、工作機械産業はジリジリと変革しているようです。
ひとつは、すでに欧米の著名な工科系大学では、工作機械系ゼミに、欧米直系民族の主任教授が 殆ど就任していないことがあり、今ひとつは、日本よりCNPが20倍以上もあるアメリカの 工作機械消費は、日本より絶対額で下まわっているという事実です。

 工作機械は、”削る”という大事な分野で約60%〜70%を占めていると思いますが、 今述べた海外と日本との思考のアンバランスを、海外側から冷静に見た場合に、本当に”削る” という分野を、過去の延長線上で図っていいものかどうか、考える必要がありますまいか。
工作機械が”機械工業の母”といわれてから、私たちはそれを信じ、思い込んできました。
しかし、ひょっとしたら私たちが知らない未知の世界で、すでに”削る”という分野が なくなりつつあるのでは・・・・だとすれば、日本のインサイダーの発言である工作機械の 将来に対する見方や考え方も、もう一度見直さなければならない時と思うのは、 私の考え過ぎでしょうか―。