No.166 「ものづくり」と差別化 2012(平成24)年7月号掲載


 人は、自分なりのアイデンティティ(個性・存在)を示すために様々なアピールをします。日本人の多くは統計的に完全に他の人と違うことを避けますが、少しだけ違うことを好む傾向もあります。ファッションや持ち物のディテールに拘って違いを主張したり、他と違って味があるなんていう表現を好んだりと、その人なりの差別化は千差万別です。それらの差別化の行動そのものが経済活動に直結していて市場経済を活性化しています。

 企業も他社との差別化を図る製品を日々苦労を重ねて開発しています。消費財となれば尚更で、この違いを合理的に経済活動に繋げるために戦略的に「流行」を作っています。毎年異なる流行が練られ、しかも他人と完全に違うのは嫌だけれど、少し違うことを好む製品を送り出す、正に現代人の満足を微妙に捉えたプロの仕掛け人達の世界がそこにあります。

 しかし、工作機械が属する生産財の世界となると趣が違います。仕掛人が活躍して流行を作るというより、経済合理性と性能を備えるお客様が稼げる道具が常に求められます。メーカーが考えて新しく需要を作り出すものを提供することも重要ですが、今の主流は、お客様が欲しいものを手早く作ってタイムリーに提供する、例えばご家庭のお母さんが冷蔵庫にある食材だけで手早く作ってかつ美味しい夕飯を提供することが求められています。マツウラは、要所に高級食材を使い、少々お値段は張るが、とても美味しい料理を提供するレストランシェフは得意中の得意ですが、これからの時代は家庭料理の達人にもならなければいけません。

 「ものづくり」という言葉には、高度な製造工程を経て産まれた高品位な製品を良しとする日本の製造業の1つの証のような響きがあります。この「ものづくり」で言う「もの」とは、広義には「対象を特定化せず一般的・包括的にいう語であり、人間が知覚し思考できる対象の一切で ある」とあります。つまり「もの」とはアイディアであり「ものづくり」とはアイディアを具現化し製品として作ることと言えます。弊社の社訓に「ひとのやらないことをやる」というものがあり、お客様の喜びそうなものを突き詰めて作ったら、結果的に他とは違うものになってひとのやらないことをやったことになった、これが差別化をもたらしたと言えます。

 今後も時流に合わせてお客様の求めるものを見極め差別化を図った製品を供給するメーカーでありたいと思っております。