No.177 バーチャルとリアル 2015(平成27)年10月号掲載


 映画と言えば、私の場合、専ら海外出張時の飛行機の中となりますが、先日体感型上映システム4DX の映画館に行った人に話を聞きました。 映画の内容に合わせて椅子が揺れたり、風や水が掛かったりと特殊効果が有ってとても驚いたそうです。 テーマパークのアトラクションよろしく没入感が凄く追加料金を払う価値は十分にあるとのことでした。

 人を含めて我々が目にする哺乳類には、部分的に退化した種を除き、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の「五感」が備わっていますが、これらに効率的に働きかけてあたかも実体験をしているような錯覚を起こさせるのがバーチャル技術の真髄なのでしょう。 ゲーム機などでは、3D の視覚装置とヘッドセットを装着、コントローラーから振動が伝われば殆どその仮想空間に埋没することが出来るようです。

 我々「ものづくり」の世界では、リアルの世界の効率を絶えず追い求めています。手に触れるリアルな「もの」を作って、そこから生まれる製品がバーチャルの世界を追求する上で重要な役割を担うことになる訳で、 リアルの追求がバーチャル装置を作るというのも何か不思議な気がします。また、最近の世の中を見ていると、インターネットを介したサイバー空間上で色々な仮想体験を積めるようにもなっています。 それを実体験と取るのか、リアルを充実させる上での補完的な要素としてバーチャル空間を活用しているのか、何が実体で、何が仮想なのか、以前公開された映画「マトリックス」の頃はあまりピンと来ませんでしたが、 いやはや何とも境界線の曖昧な世界になってきたものだと感じ入ります。

 価値観の多様化は、ルールの複雑化をもたらし、今まで存在した定義・境界を曖昧にしていきます。ですが、やっぱりマシニングセンタも3D プリンタも加工方法は違えども、良いものを純粋に作っていく世界には何の変化もありません。 割とシンプルな世界に居れて良かったと言えますかね。ただ経営者としては、五感に加えて鋭い第六感もあればなぁなんて思いますが。