No.2 輸出― 1982(昭和57)年11月号


 私達の毎日の経済も国際的視野で連携づけられており、メーカーであろうと商社であろうと、 貿易とりわけ輸出を指向する会社が増えてきている。
国内での取引になると、いろいろ検討して、どの業種が好況か、どの地域が発展する可能性を 秘めているかなど、いろんなリサーチを試み慎重な上にも慎重に商売をすすめる。
一方、輸出となると、途端にその慎重さが欠ける。”輸出―”という2文字だけで、 どんなにすばらしい青い鳥が海の向こうに、いるような錯覚に落ちることに、 当事者も周囲の者も気がつかない。
”輸出はいいですね””すぐ現金をもらえるでしょうしネ””船に乗せちゃえば、 もういいんでしょ。”

 しかし、この”輸出はいいですね”という発想は、私達のような単一民族では問題にならないだろうが、 相手側では私達のように単一民族でないばかりか、相手輸入国やその関連国内の歴史的背景、 宗教上や風俗習慣など日常生活の違いを、きっちり基本にたたきこんでおかないと 大変な間違いをしでかすことになると思うのである。
だがすでに私達は間違いに落ち込んでしまっているのではないか、 そうでなかったら、NC旋盤やNC工作機械が海の向こうに数千台も売れ残ったり、 景品付の販売をしたりはしないと思うからである。
私達が犯している大きな、この間違いの”輸出はいいですね”という安易かつ単純な 思考を今一度、考えなおして、その歴史的背景を詳しく研究し、彼らの立場を考えてこそ 本質的な輸出として、私達の糧になり相手国への利益還元につながるのではなかろうか。
相手国と対等な立場で、大人のつきあいをしてこそこのビジネスは成功するだろうし、 輸出はこの意味からも、国際法をマスターしていつ優秀な弁護士を横づけにして 取り引きするくらいの慎重さが、基本になければ、今のような副作用が前面に出てくるような 悲劇が生まれてくると思うのは、私だけだろうか。