No.24 国際的視野に 1986(昭和61)年7月号掲載


 昭和30年頃の日本経済や国民総所得(GNP)は、どの様だったのか先日調べてみましたら、 何と1人当たり330ドル。
その金額はいま話題のメキシコのGNPと同様でした。
そしていま、私達日本の1人当たりGNPは世界の富有国の仲間入りをし、 ついに10,000ドルの大台を突破しました。
10,000ドル台は日本のほかアメリカ、スイス、カナダ、ノルウェー、スエーデン、オーストラリア、 デンマーク、フィンランド、西ドイツの10ヶ国。
そしてメキシコは、世界有数の借金国になっています。

 日本とメキシコを比べるつもりはありませんが、日本人はことあるごとに 「日本が豊かだと言ったって、実感なんてないですよ」「私達の生活は何も変わっていないじゃない」 とよく言われます。
しかし、本当にそうでしょうか。
私達は食卓に数多くの皿をならべ、食事を楽しみます。
私達の食事ほど贅沢な国はほかにあるでしょうか。
スーパーマーケットや百貨店には、あふれるばかりの商品があり、道路は新しい車でいっぱい、 一番遅れていると言われる住宅も、それ程我慢できないというものでもなく、 徐々にではあるが改善されてきています。

 それに何と言っても、あらゆる活動は自由だし、治安もいき届いている、 こんな素晴らしい国が日本です。
昭和33年に、たったの330ドルの日本が30年たらずでいまの日本を築き上げたのです。

 どうして、日本がここまで富める国になったのでしょう。
我国の産業構造が海外から資源を買い、うまく加工して、あらゆる国々に買っていただく、 それが今日のような豊かになったメカニズムですね。
勤勉な集合体である日本人の、頑張り精神の結果なのですが、 あまりにも「自分勝手な経済活動や考え方」ではなかったでしょうか。
海外の方々に大変な迷惑をかけて日本が大きく豊かになったと、見られているとしたら、 いやすでに、そう見られていると考えるべきでしょう。

 日本がいま世界から、つきつけられている貿易摩擦や円高が、まさに日本人が忘れているその 「大きな迷惑」を思い起こさせるための経済現象であるとしたらこのシナリオは、 よりはっきりしてくるでしょう。

 私達日本人も、日本の方から見たり考えたりせず、もう少しインターナショナルな視野に立って、 現状の日本を見ればきわめてクリーンに理解できると思うのです。
「物」や「金」ではない、もっと精神的な豊かさをもつことの方が、大切なのでは、と思うこの頃です。