No.30 そこがミソです 1987(昭和62)年7月号掲載


 つい先日、私のもっとも親しくしています友人の一人が常務取締役に昇進されましたので、 そのお祝いに東京都内のある料亭で会食をしました。
おいしい料理とつもる話に花が咲き、旧交を暖めていますと、そこの女将さんが挨拶に来られ 話題はいつしか、その料亭の名前のいわれに移りました。

 女将さんは昭和24年、当時、大阪のミナミでお母さん、それに妹さんの3人で味噌汁をメインに 小料理屋を始められたのが、そもそもの出発とか。
一口に味噌汁といいましても、佐渡のはもち味噌や京都の桜みそ等をベースにして独自の味を 作り出したのです。
同時に10数種に及ぶ具を常に用意し、お客様の好みに合わせて魚の好きなお客様には魚をベースに、 じゃがいもが好きなお客様にはじゃがいもをベースにした味噌汁を、タイミングよく出されたのが 大きな「ミソ」となり、東京からのお客様の贔屓もできるほどの評判となりお店は大繁昌。
これが東京進出の原動力ともなり今日の大いなる成功につながったようです。
ちなみに店の名は「しる芳」で女将の名は芳子さんとか――。

 この話を女将さんから聞かされ、いま私達が悩み続けている商品開発に一筋の光明を 与えてくれたような気がしました。
いかに自分の持ち味を出し、そしてその持ち味をベースにお客様の好みを的確にとらえ、 すばやく商品を提供するのか、その手法をまざまざと教えられました。

 道を究める人は何事によらず、それぞれ哲学を持ちつねに新しいものへの挑戦を 試しているということに真から感銘を受けました。
この日も板前さんに注文をつけ、特別な料理を出していただいた女将さんに、 同席していた私達は心からお礼申し上げた次第です。
味噌をベースに客の心をとらえたのが商売繁昌の「ミソ」だったのですからね。