No.44 今まさに、大転換のなかで 1989(平成元)年11月号掲載


 世の中の動きが、ここへきて激しくなってきました。
1年前には思いもよらなかったことが、今まさに現実に起っています。
政治も経済もそして産業も---。
それは第一に、米ソの巨大国による世界支配体制が崩れ、新しい体制がつくりはじめられていること。
東西ベルリンのあの堅固な壁が撤去されつつあることが物語っています。
第二に石油ショックによる資源有限という意識が、まさに第三次技術革新の引き金となり マイクロエレクトロニクスや新素材、バイオやオプトエレクトロニクス等の新しい技術へと結びついたこと。
第三に一世紀以上も続いた工業化社会から情報化社会へ怒涛のように流れはじめた変革は、 コンピュータを中心とした情報伝達手段でさらに、加速されていること---などでしょうか。

 この動きは日本にとって、明治維新や敗戦と同じくらいの大きな転換ではないか、 そして私達はその真っ只中におかれているように感じます。
この9月に私は4ヶ月ぶりに欧州へ行きました。
そのさまがわりは目をみはるほど、航空機はどの便も超満員、そして乗り降りする各空港もあふれるばかりの人々。
そのかたわらで空港拡張工事が突貫で行われ、また私共とご縁の深い商用航空機メーカーでは、10年もの受注を抱えて超繁忙とか。

 なぜでしょうか。
それは人に最も良質で最新の情報があるからだと私は思います。
いいかえるなら人が集まる所に情報が集まり、その情報を求めてさらに人が集まる---そんな図式が私の頭に浮かんでは消えます。
こういうバックグラウンドの中で明治以来、私達がやってきた富国強兵の名のもとに欧米に学んできた日本の個性のない物づくりは、今やもう通用しないのではないか。

 ですから、私達は、私達日本人が持つ2,000年の歴史や文化をバックボーンとして世界に通用するものを考えることが大事になってきたように思います。
日本人としても心のこもった独特のものを考えてこそ、私達の存在価値があるような気がします。
今まさに大転換のなかで、そんな心に訴えつづけられるものづくりを、私達は心がけたいと思います。