No.56 東欧圏の隠れた実力 1991(平成3)年11月号掲載


 この9月、1年ぶりに東欧をふくむ欧州を駆け足で旅行してきました。
2週間のうち最初の6日間を東部ドイツとポーランドにあて、計画経済から自由な市場経済に、 どれほど移行しているのか---大きな関心の的でした。

 もともと東欧に対する私達の認識では、たとえ自由市場経済に転換しても、今までの体制 から目を見張る変化は殆どなかろうとの思いでした。
労働意欲はもちろん、技術や技能のレベルも低いと聞いており、従って出来る商品も良くない。
かえって今まで以上に体制が混乱しているぶんだけ、悪くなっているのではとの懸念もありました。
しかし、ポーランドと東部ドイツの有力なユーザーを訪問し、私の今まで抱いていた既成概念 は見事にくつがえされてしまいました。

 金型屋と特殊な無段ギヤミッションを制作している2社のユーザーを訪ねたのですが、 その変化の大きさにショックを受けました。
30代から40代の若手や中堅で構成されている2社では、高い技能レベルを持ち、働きぶりも真面目そのもの。
土曜や日曜なしの12時間2交代労働にも目を輝かして働いていました。
そして両者に共通しているのは、マーケットを西側に100%依存していること、それに伴い、 僅か2年弱という短期間に設備を逐次西側製の最新鋭機に更新。
従って商品の技術レベルや品質面においても、西側と何ら遜色のないりっぱなものがつくられていました。
このような優秀な企業がすでに東欧圏で育ちつつあり、ポーランドでは月給15,000円という コストの安さで、西側の市場経済を猛追しているという事実でした。
そして、さらに驚かされたのは、フランス人やドイツ人以上に英語の話せる従業員が多いことでした。

 この5日間で目にした現象だけをとらえて、全てを語るのは危険千万でしょうが、 私達には見過ごせない事実なのではないでしょうか。
今まで、私達が知らされていた東欧とは全く違う、隠れた実力を見せられた思いです。
心して彼らの動きを注目したいものです。