No.58 市民に役立つ所、市役所 1992(平成4)年3月号掲載


 「市役所は市民に役立つ所と考えています――」とは日興証券からメリルリンチ証券へ、 そして島根県は出雲市長へ大きく転換され話題となった、岩國哲人さんが講演された時の決まり言葉でした。
その講演を私が聞いたのは1月末。
日米の証券界で、そして民間の企業で培ってきたビジネスの合理性とコスト意識を、 岩國さんは出雲市という地方都市で実践している話しです。

 市役所の行政サービスとはいったい何なのか、市役所に市民は何を期待しているのか、 という本質論を固定観念にとらわれずに岩國さん独特の合理性で実践、 ものの見事に成功され今や島根県の出雲市は、大変な人気都市に生まれ変わったとのことです。
その手始めが、用事があるなら市役所へ出てこいという、お役所仕事やお役所根性、 親方日の丸の意識を根本から否定。
用事のある市民の方へ市役所なり市職員が出かけるという、仕組みをつくることを考え、 人々が多く集まるショッピングセンターの中に、 それも人々が一番多く集まる中心へ市の出先機関を設けるという着想でした。

 そして1年365日、いつでも市民への行政サービスを行った。
これこそ市民に役立つ所としての役目をぴったりこなしたものでしょう。
大勢の市民が毎日、特に土・日の休日に利用されるために、ショッピングセンターも大賑わいとか。
このサービスをすすめても1人の職員も増員せずに実践できたところに、 岩國さんの素晴らしさがあるのでしょう。
固定観念にとらわれず、相手つまり市民の身になって、ビジネス感覚を基本にサービス機関としての 市役所を位置づけた、岩國さんと出雲市。
この話しに私を含めた多くの聴講者は目をさまされた思いがしました。

 固定観念にとらわれず、日常の生活や仕事を見直す。
会社経営を見直す、本当にわが社はお客様の役に立っているのか、 一体お客様はわが社に何を期待しているのか――。
これを岩國さんは間違いなく実践した素晴らしさ。
でもその素晴らしさに私は完全に脱帽したのは、私が「岩國さんの素晴らしい話しを聞いて 大いに教えられ感銘しました」と礼状を出したところ、折り返し岩國さんから 「ぜひ出雲市へおいでください」と出雲市のパンフレットに添えて、 丁重な出雲市のセールスレターが届いたことでした。
さすが実践者の岩國さんですね。