No.59 オーバースペック 1992(平成4)年5月号掲載


 いま世界は大きく変革しています。ソ連、東欧の崩壊や東西ドイツの統合という、 思いもよらない動きと同時に西側諸国の自由主義社会にも大きな変化が出ています。
そして、それらは急速な情報化に伴う社会構造の変化によって、さらに加速度がついて増幅され、 先進国だけが豊かになりすぎたことでますます混迷を深めつつあります。
それが世界の大きな動きとうねりの中で、産業や政治は勿論、 企業にもじわじわと行き詰まり感となってあらわれてきました。

 日本がもっとも得意とするハイテク商品分野にしても同じような行き詰まり感がみられます。
高級化指向という美名のもとに、消費者側の目的や利便性よりも企業側の思惑と論理が先にたち、 むしろ付加価値をあげる為にメーカーにとって作りやすい点が優先され、 ユーザー不在になりつつあるような気がしてなりません。
やれハイテクだとか万能タイプなどと言う目先だけを変え、一般にユーザーが使うこともない 機能を盛り込み、価格競争やシェア拡大に明け暮れ”必ず消費者には満足してもらえる”という、 メーカーや企業側の驕りが出ているように思えるのです。

 世界も日本も、そして産業や経済も行き詰まっている今、私達の企業をとりまく環境は 冷静な目で直視しなければならないでしょう。
私共の本業である”切削加工”という原点に戻って見直してみればそれは良くわかります。
”いつでも誰でも精度よく切削できる生産システムを提供する”にはどうすべきか。
ユーザーが必要としていない機能をメーカーの論理で押しつけていないか。
一方今までの開発コンセプトのベースであった、性能向上・品質安定・競争力ある価格・シェア拡大の 4条件に加えて、安全と地球規模での環境対応力、その上いまより3〜4倍の省エネや省資源が、 新しく加わりそれらが新技術開発を協力に促している点を、見逃してはなりません。
それは昨今の新素材、特に難削材の加工が急増していることでも、明らかです。

 今や大きな転換点として”オーバースペック”という名の、 押しつけでない本当の生産システムの提供。
これこそが私達の工作機械メーカーに課せられた命題だと思います。
そしていま、あらためて原点に立ちかえり、原理原則を再度、見直したいと思う私です。