No.67 日米逆転した製造業 1993(平成5)年9月号掲載


 先日の米国自動車メーカーが2,000cc級の乗用車を9,000ドル台で販売するというニュースには、世界中がびっくりしました。
日本でもその驚きは大きく、1ドル100円で換算すれば、90万円台という超低価格です。
米メーカーはこれで生き残りをかけた勝負に出てきたのでしょう。
まさに米国自動車産業は復活したといえますね。

 自動車以外でも、米国は日本を凌駕している商品があることを、先日、半導体メーカーの社長から伺いました。
最新ハイテクを駆使した半導体装置が、日本製より米国ミネソタ州のメーカー製の方が安いという現実を−。
しかも、要求された品質と性能は完全にクリアされ、納期も完璧、かつ流通コストを加えても日本価格の75%で、日本の指定先へ納入するというものでした。
まさに、日米の製造業が逆転した現実を、みせつけられた思いです。
きわめて深刻に、そして相当はやい速度で日本産業の空洞化を促進しています。

 そして、この空洞化は今回の1ドル100円という円高で、さらに加速されつつありましょう。
一般的な製造品は日本よりコストが安い東南アジアなどへ、生産シフトしていることは承知していましたが、いまやハイテクの分野まで、既に米国に抗しきれないという現実に、慄然とさせられました。
しかし日米のコストを冷静にチェックしてみれば、納得せざるをえません。
電気量が1/2〜1/3、ガソリンが1/4、住宅コストは1/5〜1/7、そして10年勤務のスキルワーカー(一般的技能労働者)の年俸が20,000〜30,000ドル、ということをみれば、本気でやり出した米国の底力は、とてつもなく大きく恐怖すら感じます。

 どうやら日本は、こんなに高くなったコストをかかえこみながら、世界市場を相手に何を供給していくのか、根本的にかつ基礎を押え込まないと、生き残っていくことは無理でしょう。
日米の逆転した製造業、そして1ドル100円という円高に浮き足立つのではなく、それを逆手にとって、もう一度私達の業界や企業のあり方を考え直すときなのでは−。
私は、いまがその絶好の機会だと思っていますが、いかがでしょうか。