No.79 中国雑感 1995(平成7)年9月号掲載


 人口12億人をかかえる中国。
日本はもとより世界各国が大変、魅力的な市場とみており、生産基地としてもビックビジネスへの 可能性に期待しているのは、周知の通りであります。
その中国を昨秋に続いてこの9月、日本工作機械工業会の仕事で再び訪問することができました。
第4回中国工作機械国際見本市で出品されている、中国製の80%がNC化されているのに驚き、 また北京の街並みの変化にも、その躍進ぶりが伺えました。
しかし一方ではエネルギーや輸送システムなどの、インフラのアンバランス、 沿海部と奥地との所得差の拡大など、その先行きに不安を感じたことも否めませんでした。

 その北京で、京都の大学へ留学している青年に再会。
寸暇を惜しんで旧交を温めながら、私の感想をぶつけてみましたところ、 彼はすかさず「我が国は安定している時よりも、不安定な時がずっと長いのです。
もし松浦さんが中国で仕事をするのなら、その事を肝に銘じ中国に住んで、 中国の土になる覚悟が必要ですよ。そうしないと中国でのビジネスは失敗します」と話され、 冷水を浴びせられた気持ちでした。

 彼は7才の時に文化大革命の波にあい、筆舌に尽くしがたい苦難の時を過ごした体験にもとづき、 中国人観を語り私のさまざまな質問や、時には答えにくい事にも、いやな顔もせず、 丁寧に説明してくれました。
翌日、お目にかかった御両親からも常に彼ら一族が、永遠に繁栄していくための リスクマネジメントがなされており、世界の各地で活躍しながら相互扶助のシステムが働いているのには、 私達の将来についても考えさせられました。
それでいながら、御両親も青年も穏やかな話しぶりと笑顔をたやさず、 淡々と人生観を話されるのには長江の流れを感じさせ、あらためて中国の歴史の深さを知らされた思いです。

 中国市場や中国ビジネスへの憧れや躍進だけに、私達は目を奪われることなく、 含蓄ある彼の言葉を吟味し冷静に長いスパンの中で、世界をみつめて考えなければと、 今回の旅行でつくづく考えさせられました。