No.81 ビジネス形態のちがい 1996(平成8)年1月号掲載


 絶好調といわれる半導体産業界で活躍中の知人に、先日ひさしぶりに会う機会がありました。
彼は30年近くも国内大手メーカーで半導体関連の仕事に携わってきた方です。
昨年あるキッカケから香港の半導体メーカーのスカウトで転職、現在1,700人の従業員をかかえる 工場長兼マネージャーを仕事としています。

 「半導体が大変にいいようですが、その反動がぼちぼち出るのでは」 「いや今度は、まだいい状態が続きそうですよ」などと、世間話をしながら彼から 香港のビジネスや管理者の実態を聞くことが出来ました。
それは――マネージャーとしての待遇は、日本とは比較にならぬ程 (ストックオプションを含めて3倍以上)良くなったが、それに伴って利益責任がついてくる。
これは当然のことだが、利益責任を達成するために全ての権限は彼が持っている。
そしてそれが未達成の時は、3ヶ月でクビ――などという徹底ぶりでした。
「全ての案件は、私が例えば数億円の設備投資等も即時に判断して決裁、 行動を起こさねば工場は動きません。 この即時の判断となるモノサシは、契約した利益責任が基準となります。 マネージャーという仕事は本来、こういうもんではないですか。 契約会社ですからね、日本とは違いますよ」
「特に問題なのはビジネスのスピードです」。

 それにしても、日本のビジネスは、リンギ方式で時間がかかり過ぎ、タイミングを失しますね。
この違いがあっても勝負が、日本に決まっていれば何とかなるものの、 今のままでは取り残されてしまうでしょう。
ピラミッド型の組織と利益責任があいまいな経営の仕組みや、 マネージャーといえば総合調整役としてのコントローラーにすぎない日本のシステム。
勝負は決まったようなものですね。

 ビジネスの厳しさは香港だけでなく、世界中が同じでひょっとすると日本のみが特殊なのかもしれません。
「世界に通用するビジネスは、もともとこんなものなんでしょうね」 と話す彼の言葉には、私達の取り組み方やあり方について、つくづく考えさせられました。
香港ビジネスの一端から垣間みた、世界に通用するビジネスに、 底知れぬ驚きと恐怖を感じたのは私一人だけではありますまい。