No.97 産業構図を覆す技術革新 1998(平成10)年9月号掲載


 2003年には自動車に燃料電池を搭載した、ホンダの車を市販し走らせる―― と発言されたホンダの新社長、吉野浩行さん。
福井出身で高校が同窓、後輩でもある彼は、この6月に新社長に就任され新しい元気なホンダの 顔としていま話題の人です。
その吉野さんと、ブリヂストンの社長で同じく高校が同窓、先輩にあたる海崎洋一郎さんら、 同郷の方々との会合が先日、東京で催されました。
同郷という間柄もあって、歯に衣をきせぬ本音の言葉が「2003年には燃料電池自動車の実用化」 発言でした。

 この本音の発言は、工作機械製造を業としている私にとって、従来までの産業や経済の構造が 根底から覆されるようなショッキングな思いでした。
ご承知のように、わが工作機械業界に占める自動車産業依存の割合は、50%強を占めており、 この業界の変革は大変な関心事です。
自動車ならびに同業界を取り巻く関連業界、そして徹底したエレクトロニクス化した最近の自動車産業。
私達の工作機械にとって、最大のお客様であるこの産業が、燃料電池で走ることは省エネや 環境問題などいろんな情勢からみても、それは時代の要請なのでしょう。

 前述の様に工作機械業界に占める自動車産業のインパクトは、 測り知れないほど大きいものがあります。
燃料電池の出現で、エンジンとトランスミッションがモーターとインバーターに 間違いなく代替されましょう。
さらにいろいろな機能部品も燃料電池搭載への技術革新で、大きく変化することは疑いありません。
この事は切削を主としている、わが業界のパイが縮小することです。
その上、燃料電池やモーターを作る能力がある電気メーカーが自動車を作る、 という時代が出てくる事も予想されましょう。

 こうみてきますと、これからの技術革新は、今までの産業のあり方を、 根底から覆すような時代の到来を、覚悟せねばならないと思います。
とすれば、私達はこれから来るであろう大きな、予想もできぬ変化への対応は、 未知の海へ海図のない航海に出るような事態になります。
その為にはいかに信頼に足る情報を素早く集め、予測し、勇気を持って行動するかにかかっています。
不安もありますが、逆にビジネスチャンスでもあり、”成功”を信じて前進あるのみの毎日です。