No.95 モノ作りと技能伝承 1998(平成10)年5月号掲載


 今モノ作りが見直されつつあります。
大量消費に支えられていた大量生産の時代から、「日替わりメニュー」で変種変量と言われる 変化とスピードに素早く対応する時代になり、必然的に今のシステムでは、 限界にきたように思うからです。

 ドイツの名車ベンツに代表される、この国の製造業を支えたマイスター制度。
経済拡大に伴い、製造現場に受入を余儀なくされた移民によってこの制度が崩壊したドイツは、 工業製品のクレーム発生で、マイスター制度を国の威信をかけ、新たに見直し始めているようです。
このようにモノ作りは、もともと機械やコンピュータだけでなく、 人間の知恵と工夫によるスキル(技術や技能)に支えられていたのですが、 今あらためて考え直す時期になったのでしょう。

 一方日本の製造業は、技能者や技術者の大量退職する時代をむかえ、 日本のモノ作りを支えてきた技術や技能が、円滑に次世代に継承されるかが、 我が国製造業の発展にとって大きな鍵になってきました。
まして小子化や高齢化社会をむかえていますから、尚更です。
この熟練した技術や技能をもつ方々の、人間的に円熟した個人技能や技術を、 どのように伝承させるのでしょうか。
ましてや変化と環境に素早い対応を求められるモノ作りは、一段と制度と工夫を要求されており、 日本の現場では、まさに重大かつ喫緊に課題です。

 「してみせて、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かぬ」 という名格言があります。
実際のモノ作りの現場で、自らが再現して見せて、その仕事や技能の重要性を良く理解出来るまで 話し合い、そして実際に作らせて感動を実感させ、同時に誉めかつ評価する――
こんな方法以外に名案はないと思いますが、いかがでしょうか。

 今や製造現場での、技能や技術の伝承システムは、企業のみならず、 業界全体や行政側などを巻き込んだ、仕組みでうまく運用すれば、 誰でも良い仕事をして喜んでもらいたくなりましょう。
技能伝承を成し遂げるエネルギーは、こんな地道な活動から生まれてくるのではないでしょうか。