No.63 ニューイヤーコンサートin福井 1993(平成5)年1月号掲載


 「本場のウィーン音楽の薫りを福井の人達に届けられる楽しい演奏会に――」。
この1月、福井県文化振興事業団設立10周年を記念した「ニューイヤーコンサートin福井 〜ウィーン音楽の夕べ〜」は、こんな思いをこめられて開催されました。
指揮はソニー社長で、マツウラの会長でもある大賀典雄さん。
日本のトップ企業の経営者としての顔を持つ音楽家でもあります。
この素晴らしいお年玉は昨年1月に金沢と富山でコンサートを開催されたことから 「今度はぜひ福井でもお願いしたいですね」とお尋ねしたのが、 きっかけとなり大賀さんのご好意で実現しました。

 福井での演奏会は大賀さんがドイツやオーストリアに留学されていた頃の、 ウィーンフィルのニューイヤーコンサートに魅せられ続けていたこともあって、 シュトラウス一家の夕べとなったものです。
曲名は誰でも知っているワルツの名曲”ウィーンの森の物語””美しく青きドナウ”等を演奏され、 アンコール曲は、恒例の”ラデッツキー行進曲”でしたが会場からわきあがるような手拍手は、 演奏者と聴衆が一体となり、その盛りあがったフィナーレは今でも忘れることの出来ないほどでした。

 この会場全体を包みこみ盛りあがりをみせた演奏会には、世界のトップ企業である大賀さんの 面目躍如たるものがあったことを私は見逃すことは出来ないと思います。
それは第一部の演奏会が終わり休憩のあとでした。
大賀さんは片手に指揮棒、反対の手にはマイクをもって登場され、 そしてウィーン音楽の曲目の意味や時代背景などを語りかけ、指揮を始めたからです。

 こんな型破りの指揮は、第一部で演奏会場のムードが何となく盛りあがらないことを 察知した大賀さんが、瞬時に判断して行動されたのではないかと私は思うのです。
会場全体の雰囲気をとらえ適切な判断をし行動する、それも独特の感性と これまでの習慣にとらわれない融通性があって始めてできたのでは――。
この型破りの素晴らしい演奏会の指揮者である大賀さんには、企業経営者としての見事な一面を 示しているような思いがいたしました。