今回のこんなユーザーは、東海道本線（JR京都線）岸辺駅から車で5分ほど東にある株式会社大谷機械工作所を取材しました。 
　取材には会長の大谷智宏氏と社長の大谷貴之氏に対応頂きました。大谷社長は35歳で、今年3月20日に4代目社長に就任したばかりです。 
　大谷会長のお父様が昭和14年に創業され約70年の歴史があります。 
　創業当時から大手企業の協力会社として鋳物加工に注力しており、現在も産業用ブレーキや油圧機器部品加工を大手企業と直接取引をされています。 
　大量生産には進まず、中ロット・小ロットの比較的数の少ない生産に特化する経営方針を継続されています。 

昭和53年にマツウラのマシニングセンタ導入

　マツウラがマシニングセンタを開発したのが昭和49年です。　同社では、その4年後の昭和53年6月に「MC-1000V」を設備しています。 
　「ある大手企業から原子力燃料関係の部品加工の依頼がありました。ステンレスのボックスに燃料棒を入れる穴加工ですが、高精度なので当時の当社では加工できる設備がありませんでした。そこでマシニングセンタなら加工できると思い、マツウラさんの営業に相談したところ大丈夫との答えがあり、導入を決めました。加工精度も問題なく、以後マシニングセンタが主力設備となりました」と大谷会長。

　それ以後、昭和55年に「MC-710V2」、昭和58年と昭和60年に「MC-760V2」、昭和63年に「MC-760VX」とほぼ3年ごとに立形マシニングセンタを設備しています。 

変化する生産量への対応

　平成2年に横形マシニングセンタ「MC-450H」を設備しています。「お客様より多品種少量生産の要求がありました。これに対応するために11面パレットを装備し長時間無人運転できるMC-450Hを導入しました。工具も100本仕様であらゆる加工に対応できる体制を取りました」と大谷会長。 

　「この機械が設備された当時、私は高校生で休みに工場でアルバイトをしていました。MC-450Hの11面パレットの動きを見たとき、すごいと感動し1日中見ていても飽きませんでした。こんな最新の機械が自分でも使える。また自分の作った部品がこのような機械に使われる。この印象が将来跡を継いでモノづくりに携わろうと決意した一歩でした」と当時の思いを語る大谷社長です。

　そして、平成18年3月に横形マシニングセンタの最新機種「H.Plus-300」を設備され、現在NC旋盤が９台、複合旋盤が１台、そしてマシニングセンタが９台と変化に対応できる生産体制が整っています。 

新しい時代への船出

　「昭和20年に現在の地の工場を移した時は、周辺には何もありませでした。現在は住宅地となり、無人運転できる機械があっても近隣を意識して一直で仕事をしています。以前加工が終わった合図のパトライトが赤く点灯したとき、火事と間違えた近隣の通報で警察が来たこともあります。しかし、簡単に工場移転も出来ないので、この制約条件の中で工夫をしていくしかありません。百年に一度の不況と言われる一番大変な時に社長を交代しました。社長は会社の中で一番若い。若い人の感性で、この難局を乗り越え新しい経営を行ってほしいと思っています」と大谷会長。 
　それを受け「子供のころから社員の方々を良く知っています。逆に皆が自分を経営者と育てるために、これも覚えた方が良いと引っ張ってくれています。不安はありますが、皆が盛り上げてくれるので前を向いて進んでいるところです」と大谷社長。 

　同社の仕事先である大手企業は、グローバル化の中で総合的に世界から部品を集めています。コスト、市場を求めて量産品は東欧など海外へ出ています。量のある部品は国内には回ってこない状況となり、中ロット以下の仕事しか残れません。同社では、今までの中ロットが小ロット、また小ロットが単品と移り、新社長のもと生産体制の革新が進められています。

　同社は、多数のメーカーの工作機械を設備しています。 
　「その時代で最先端の機械を導入し、技術力を高めてきました。いろんなメーカーで最新機種の故障を経験し、今でも完治していない機械もあります。マツウラのマシニングセンタはハード的な故障が少ないので助かっています。またMC-760V は今でも十分な加工精度が出ます。このように品質が維持されていることは、大変嬉しく思っています」と大谷会長より高い評価を頂いた取材でした。