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OVERRIDE1000%

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(松浦取締役コラム)

令和7年秋号のOVERRIDE1000%

令和7年秋号

 「この問題解決の手順は?」「その作業の目的は?」「他の作業に対する優先順位は?」といった問いに対して、組織内に蓄えられた知識を引き出す力を理論化したものに、Shared Mental Mode(l SMM)とTransaction Memory System(TMS)があります。
 SMM は組織における基本的な仕事の進め方に関する共通認識を扱い、全員が同じ基盤を理解し、同じルールのもとで行動できるかを重視します。例えばトヨタ生産方式のように、作業標準が明確に共有され、誰もが遵守している状況は強固なSMM の例です。これに対しTMS は、知識が誰に蓄積されているかを把握し、必要なときにその知識を引き出せる仕組みを指します。つまり「この分野なら○○さんに聞けばよい」といった認識が確立し、ネットワー クを通じて分散知識を有効活用できるかが問われます。TMSを強化するには部門を越えた直接的な交流が欠かせず、日本企業にかつて存在した“たばこ部屋”や“ 飲み会”といった非公式の場が、その形成に大きな役割を果たしていたとも指摘されています。しかし近年、そうした機会が減少し、企業は新たな仕掛けを模索せざるを得なくなっているでしょう。
 かっこつけた議論をしましたが、そんなに複雑なものでもないかもしれません。実際、この数か月の間、若手社員からの希望者を集めて、会社の課題や解決の道についての議論の場を設けました。この活動の感想を聞いたところ「他部署に気軽に相談できる人ができたのが一番良かった」という声が聞かれました。これは、単なる意見交換の場が新しい知識ネットワークの構築に結びついたことを示しており、まさにTMSの強化が実感できる瞬間でした。他部署との交流が大事なんて、みんななんとなく分かっていますが理論立てて説明されるとなんだか納得感が増すものです。とにかく、こうした小さな積み重ねを続けていきたいですね。

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