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(松浦取締役コラム)

令和8年新春号のOVERRIDE1000%

令和8年新春号

 企業が長い年月をかけて成長していくと、“知の探索”が行われなくなることによって、イノベーションが起きにくくなるというジレンマが経営学では指摘されています。つまり、リスクやコストをかけてまで未知の領域に踏み込む行動が敬遠されるようになる。ここで重要なのは、これは単なる「今の若者は…」といった個人の意識の問題ではなく、組織行動の仕組みに起因しているという点です。

 たとえば、よくある「事前に費用対効果を証明せよ」という議論。これは成功を予測することが前提になっていますが、未来を正確に予測することは非常に難しいという現実があります。現在市場で売れている製品も、その成功は振り返って初めて理解できることが多いですが、先人たちも不確定要素を排除したうえで行動を起こしていたわけではないでしょう。さらに組織内で分業が進むと、責任の範囲が明確に分かれる一方で、「根拠を出せ」「費用対効果を示せ」といった“否定しにくい正論”が簡単に言えるようになります。その結果、調査や資料作成、社内調整など、限られた時間とリソースの中での負担が大きくなり、「面倒だから提案自体をやめよう」となる構造が生まれる。このようにして、挑戦への意欲が徐々に抑えられているのかもしれません。

 かつての経営学では、「人間はすべての選択肢を把握し、常に合理的な意思決定を行う」という前提がされていました。しかし、近年の実証的な研究では、①人間の認知能力は限られ、すべてを把握するのは困難 ②経営環境の変化は早く、未来の正確な予測は不可能、という前提に基づいた現実的な理論へとシフトしています。「単に成功を予測することを求めるのではなく、不確実性の高い環境で、どうやって挑戦を促す組織を作っていくか」という視点で仕事の進め方を再考する必要がありますね。

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