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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.155

製品カテゴリ:MAM72-35VMAM72-63VH.Plus-300

山形県米沢の地で航空宇宙機器部品加工に特化する

八千代田精密株式会社 様

 今回のユーザーを訪ねては,JR米沢駅から車で北へ15分ほどの八千代田精密株式会社を取材しました。取材には佐藤武次会長と栗木和彦社長にご対応頂きました。同社の創業の原点は、昭和23年に輸入工作機械の販売をする八千代田産業株式会社の設立です。昭和40年に、八千代田産業の分社化により、八千代田工業が設立され工作機械関連の製造や航空機部品関連業務を移転。そして、昭和54年に山形県米沢市に航空機宇宙機器関連製造の工場を新設して本格的に同事業に進出しました。しかし、平成12年3月に八千代田工業の閉鎖が決まり、社員による出資で八千代田精密株式会社を独立創業。同年6月より新組織で本格稼動をはじめ、現在に至っています。

社員持ち株会社による創業

 「八千代田工業では車関係や弱電メーカーの専用機を作っていました。部品加工の基礎はありましたが航空機部品に関してはゼロからのスタートでした。我々米沢工場のスタッフは、千葉の本社工場の研修で部品加工の基礎を学び、米沢工場で本格的に航空機部品の製作に取り組みました。当時ボーイング767が発表された時で、東北で航空機部品製作を行っていたのは当社だけでした」と米沢工場立ち上当時を語る佐藤会長。

 「平成12年3月に八千代田産業が特別精算となりました。航空機部品の取引先から、“米沢工場でしか出来ない仕事があるので、もし業務を継続するのであれば、引き続き契約をしたい”との申し出がありました。取引先は宇都宮にあり、米沢との距離が遠いとの心配する声もあったそうですが、山形県人の仕事に対する実直さが信頼を得ていたことが評価されました。また当社では航空機部品しか加工していなかったので、他の仕事は出来ないので必死の思いもありました。3ヶ月で残務を整理して、工場と設備をすべて買い受け6月に正式に創業となりました。株主は社員なので自分たちの会社との意識も高く、団結も強い会社です」と佐藤会長。21人の社員の持ち株による八千代田精密株式会社が誕生しました。役員は65歳定年制を取っており、64歳となった佐藤会長は、昨年11月に社長を引退され、53歳の栗木社長にバトンタッチされました。

航空宇宙部品加工の取組み

 創業の次年度、平成13年に航空機部品加工において更に技術力を上げるためにC A D / C A M システム「CATIA V5R6」を設備。これにより取引先からのCADデータを直に取り込み、加工プログラム作成が格段にレベルアップしました。航空機部品加工を行うにはCATIAと三次元測定機は絶対に必要とのことです。「当社の設備は、5軸を含めマシニングセンタが17台、その他にNC旋盤や複合加工機、更にブローチ盤や汎用旋盤、汎用フライス盤、ボール盤、センターレス研磨機等々を設備しています。しかし設備の台数の割には社員35名と少数です。機械の稼動率は高くありませんが、取引先からの様々な加工に対応できる体制を取るために必要な設備です。それと品質、環境への取り組みとして平成23年にISO9100取得、平成22年にエコアクション21を取得しました」と栗木社長。

 「航空機部品の特徴として、材料は100%支給です。10個の注文があれば10個しか支給されません。初回は自前で材料を準備してテストを行い、本番は支給材で行います。部品によっては加工プログラムを提出して承認を得る場合もあります。また加工する機械が固定され、機械を変更する場合には、同じ機種であれば良いですが異なる機種で加工する場合には、再度承認を得る必要があります」と佐藤会長より航空機部品加工の特性が語られました。

5軸加工機の導入

 平成13年にマツウラの5軸制御立形マシニングセンタMAM72-35Vが設備されました。「航空機部品を加工する場合に絶対5軸加工機は必要と考えていました。しかし、創業当時は立形マシニングセンタが主力で5軸加工機がない状況でした。MAM72-35Vを導入するきっかけは、ボーイング777の改修部品加工でした。材料がアルミからステンレスへの変更となり、数百機の航空機全ての変更なので生産量を上げる必要がありました。
5軸加工で長時間無人運転できるMAM72-35Vに決めました」と佐藤会長。平成18年に加工ワークが630mmまで加工出来るMAM72-63Vの6面パレット付を導入、航空機の量産に対応できる体制を確立。更にボーイング787の部品量産が必要となり、平成22年に横形マシニングセンタH.Plus-300を1台、昨年第二工場新築時に横形マシニングセンタH.Plus-3001台と立形マシニングセンタV.Plus-1000を1台設備しました。
「MAM72は、32枚のパレットを最大限活用し365日間フル稼動しています。当社にはマツウラのマシニングセンタをはじめ多数の加工機を設備しているので、取引先から困った時には八千代田精密に頼めば解決してくれるとの信頼を得るまでになっています」と栗木社長。

3.11東日本大震災

 平成23年3月11日の東日本大震災では、同社も地震により生産設備が使えない状況になりました。マツウラでは地震発生後、直ぐに東北地域のお客様へ機械整備の為にキャラバン隊を派遣しました。同社にも4人のマツウラ社員が入り、機械の整備及び精度確認を行い、地震発生1週間後には再稼動出来るように対応しました。「1週間で稼動出来たことで、取引先には迷惑をかけずに済みました。しかし、納品には苦労しました。東北自動車道が不通になっていたので福島県会津経由での納品、さらに遠方の取引先には新潟まで部品を運び、そこから宅配便にて納品しました。取引先は、この震災の影響もなくボーイング社に納品出来たことが評価され、昨年“サプライヤー・オブ・ザ・イヤー賞”を受賞しました。当社の部品が停滞せず納品出来たことも、この評価に繋がっていると考えています。その意味で震災直後マツウラが実施された早期復旧対応に感謝しています」と佐藤会長。

 インタビューの最後に佐藤会長より「八千代田精密の常識は世間の非常識と言っています。世間の常識では利益優先ですが、会社は利益のみの追求ではない、社員の幸福が一番、社員が幸せにならないと周りを幸せに出来ないと考えています。そして、社員への還元が出来る会社、安心して働ける会社作りを目指しています。また朝出社して、今日も頑張るぞと思える職場では高い生産性が実現できるので、そういう職場づくりも心がけています」との言葉に“社員持ち株会社”としての企業文化を感じた取材でした。

会社情報

会社名
八千代田精密株式会社 様
本社
〒992-0003  山形県米沢市窪田町窪田字東小堺1310-2
TEL
0238-37-2723
FAX
0238-37-2812
代表者
代表取締役社長 栗木和彦
設立
平成12年3月
従業員
35名
事業内容
航空宇宙機器部品加工、空洞実験模型製作、精密機械部品加工、治工具設計・製作
URL
http://www.yachiyoda.co.jp/

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