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ユーザーを訪ねて

2022年夏号のユーザーを訪ねて

No.190

製品カテゴリ:Linear Motor Series

眼鏡産業の祖にリニアモータマシンがもたらした『ゆとり』

増永眼鏡株式会社 様

 

今回のユーザーを訪ねては、北陸自動車道の福井ICから車で15分の距離にある増永眼鏡株式会社です。マツウラが本社を構える福井県は眼鏡フレームの産地として知られ、国産眼鏡フレームの90%以上を生産しています。今や一大産業となった眼鏡づくりを福井の地に根付かせた『眼鏡産業の祖』こそが、今回の取材先である増永眼鏡株式会社です。取材には増永宗大郎代表取締役社長にご対応頂きました。増永社長は大学でマーケティングを専攻し、卒業後は日本商工会議所に入所されます。25歳で同社に入社し、2013年に5代目を継ぐ現職に就任されました。「卒業後すぐに家業を継ぐのではなく、一度別の業界で学びたいと考えました。お付き合いのある問屋さんなどで修業する道もありましたが『増永』のネームバリューが通用しない業界に身を置きたいと思い、日本商工会議所に入所しました。商工会議所では業務を通じて様々な中小企業の経営の在り方に触れることができました。当時の経験やそこで築いた人間関係は、経営者となった今では貴重な財産です」と増永社長。

眼鏡産業の祖

高級眼鏡フレームの製造及び販売を手掛ける同社の歴史は、すなわち日本の眼鏡産業の歴史でもあります。増永社長の曾祖父であり、創業者の増永五左衛門氏は『眼鏡産業の祖』としてその功績を称えられています。五左衛門氏は1872年、麻生津村(現在の福井市生野町)に生を受けます。村の人々は農業を生業としましたが、冬季は深い雪に覆われるため農業のみに頼る当時の生活は貧しいものでした。「何か産業を興さなければ村の生活水準は上がらない」と考えた五左衛門氏は、弟の幸八氏と共に福井に眼鏡産業を根付かせるため奮闘します。技術指導に腕利きの職人を福井に招き、眼鏡づくりを開始した1905年6月1日が同社創業の日となります。「帳場制」と呼ばれる生産体制の下、同社の職人たちは技術を飛躍的に高めてゆきます。1933年には昭和天皇への献上品を作成、1970年には当時の人気モデル「CUSTOM72」が大阪万博のタイムカプセルに収納されるなど、歴史的な逸品を数多く世に送り出します。2022年現在、同社は世界30カ国に製品を展開するグローバル企業に成長。「MASUNAGA」ブランドを冠した眼鏡フレームは、その品質とデザイン性から世界中で高い評価を得ています。日本の眼鏡産業の発展に寄与した増永兄弟の物語は、藤岡陽子さんの小説「おしょりん」に描かれ、この小説を原作とする同名の映画が2023年秋に公開予定です。

マツウラとの縁

「私の入社以前から当社にはマツウラの機械が設備されており、マツウラの存在は身近に感じていました。また、個人的にもマツウラとの浅からぬ縁を感じています。20年程前のエピソードです。当社が名古屋のホテル会場で小売店さん向けに眼鏡の展示会を主催した事がありました。偶然、近隣で工作機械関連の会合が開かれていたようで、当時マツウラの社長であった松浦正則前会長が展示会を覗かれました。会場では様々な会話を交わし、その際に正則前会長が気に入った眼鏡を後日お持ちしたことを記憶しています。また松浦勝俊社長とは同じ高校出身の先輩後輩の関係でもあり、マツウラには様々な面において親近感を覚えています」とマツウラとの縁について語る増永社長。

サービス対応への信頼感

現在、同社では1973年に設備した汎用フライスVC-1000 から、最新のハイプレシジョンリニアモータマシンLV-500 に至るまで5台のマツウラ製品が稼働しており、いずれも眼鏡部品の金型や治具の加工に役立てられています。「50年近く前に設備した2台の汎用フライスVC-1000 とVC-1800は今も現役で稼働しています。また2台の赤いマシニングセンタMC-560V とMC-600V も当社のモノづくりを牽引してきた機械です。マツウラに対して特に信頼を置いている点はサービス対応の早さです。今年3月に設備したLV-500 についても様々なメーカーを検討しましたが、最終的にはサービス対応への実績と信頼感が決め手となりました。機械トラブルに直面した際、修理部品の手配などに自社スタッフの労力を割くことは非効率的です。トラブルに惑わされず自社のモノづくりに集中できることは、生産設備として大きな意味を持ちます」と増永社長。

『ゆとり』が生んだ好循環

最新のリニアモータマシンLV-500 は同社の生産性を大きく高めました。設備に至った経緯や得られた効果につ いて、製造部門の責任者である田島信一工機課長にもお話を伺いました。「従来、眼鏡部品のプレス金型は部品の元となる原型を造り、それをコールドホビング鋼に油圧で打ち込む方法で製作していましたが、近年は金型を直接彫り込む製作方法にシフトしつつあります。当社でも同様の加工を30年以上前のマシニングセンタで行っていましたが、旧型の機械では面精度に限界があり磨きに時間を要していたため、高速加工が可能なLV-500 の設備に至りました。LV-500 では直彫りのみで金型が製作できるようになり、新型開発における金型の製作時間が三分の一にまで短縮されました」と田島課長は語ります。増永社長もLV-500 による生産性向上について次のように評価します。「加工時間の短縮が当社の製造部門に『ゆとり』を生みました。LV-500 の設備以前は日々の作業に追われ、精神的にも肉体的にも負担となっていました。しかし加工時間が短縮されたことで、製造部門のカイゼン活動にリソースを割くことが出来る様になりました。当社のモノづくりの在り方を良い方向に変えていく、好循環を生むきっかけとなった機械です」

プロダクトアウトとマーケットインの融合

取材の最後に、同社の将来像について伺いました。「当社は3年後の2025年に120周年を迎えます。眼鏡業界では一定の知名度を得るようになりましたが、一般のユーザー様にも当社のこと広く知って頂きたく思います。そのために、より気軽に眼鏡店に立ち寄って頂ける雰囲気を作りたいのですが、フレームメーカー単体で打ち出す施策には限界があります。レンズメーカーさん、小売店さん、検査機や加工機器のメーカーさんなど、業界全体を巻き込んだ取り組みが必要です。その先陣を切るため、当社の直販店を気軽に立ち寄れる眼鏡店のモデルケースとして役立てて貰いたいと考えています。そのような中でフレームメーカーとして当社が目指すべき方向性は『良いモノを作れば必ず評価される』という昔ながらのプロダクトアウト的思想を重んじながら、掛け心地や使い易さといったユーザー様の目線に立った、マーケットイン的発想を融合させた製品づくりを進めることだと考えます」と増永社長。


LV-500 の設備から増永社長はとある気づきを得たとのことです。「新しい設備を定期的に取り入れる必要性を改めて痛感しました。30年前の古い機械を大切に扱うことは当然良いことです。しかし、この30年間でマシニングセンタの性能は各段に向上しています。20 ~30代前後の若いオペレータには新しい機械を使いこなし、当社のモノづくりの未来を支えて欲しいと考えるようになりました。先に述べた生産性の向上を鑑みても、本当に思い切って設備して良かったと感じています」と増永社長。インタビューと工場風景の動画は、記載のQRコードを読み取りご視聴頂くことができます。また、当社ホームページでも公開中です。ぜひご覧ください。

会社情報

会社名
増永眼鏡株式会社 様
本社
〒918-8152 福井市今市町4-15
TEL
0776-38-1501
FAX
0776-38-7424
青山店
(直営店)
〒107-0061 東京都港区北青山2-12-34
代表者
代表取締役社長 増永宗大郎
創業
1905年6月1日
従業員数
182名
事業内容
高級眼鏡フレームの製造及び販売

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