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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.158

製品カテゴリ:MAM72-35V

自社ブランドの眼鏡がパリ国際眼鏡コンクールでグランプリを受賞した

青山眼鏡株式会社 様

 今回のユーザーを訪ねては、JR福井駅から車で南へ10分ほどの青山眼鏡株式会社を取材しました。取材には青山恭也会長と青山陽之社長にご対応頂きました。会社は青山会長の父・青山勝彦氏が昭和12年に創業していますが、その勝彦氏の父・青山彦左衛門氏が明治38年から眼鏡フレームの生産を手がけていました。青山彦左衛門の名前は、「さばえ人物ものがたり」(鯖江市教育委員会文化課発刊)に“眼鏡枠づくりの種をまいた鯖江の先駆者、鯖江で初めて眼鏡づくりに取り組んだ人物”として紹介されています。「会社としては3代目ですが、眼鏡づくりでは4代目になります」と青山社長。眼鏡枠には金属を使用した“メタルフレーム”とセルロイドを使用した“セルフレーム”があります。同社は、セルフレームに特化しています。現在材料はセルロイドの燃焼性が高いためアセテートに変わっていますが、セルフレームと呼ばれています。

 青山会長は、東京の大学で電気技術を学び、卒業後入社。「高校時代から学校が終わると近くの電気部品を扱う店に通い、カメラやラジオを作っていました。大学も眼鏡づくりと関係ない電気を勉強しました」と青山会長。青山社長は、青山会長と同じ様に電気に興味があり、高校では電気科に入学。福井の大学と大学院で経営とコンピュータを学び卒業後入社されました。「小学生の時に会社にアメリカのホライズンというパソコンが入りました。父と兄がゲームのソフト作り、私はそのゲームで遊んでいました。中学時代にFM-7のパソコンを買ってもらいプログラミングを始めました。学生時代も会社の独自ソフトを作るなどして手伝っていました」と青山社長。

数々の最先端技術に挑戦

 古くは、セルフレームの加工には眼鏡加工専用の”ならい加工機”が使われていました。平面状の素材にモデルにならって形状とレンズの入る穴と溝を加工し、その後プレスで円弧状に曲げていました。青山会長は、最後にプレス加工するために形状がゆがむので、材料をプレスで円弧状に曲げてから加工出来ないかと考えていました。そして、昭和44年に大手電気メーカーのCNC(コンピュータを使った数値制御)と浜松の会社と共同でセルフレームを自動で加工できる機械を開発しました。青山会長の電気に関する知識が活かされた開発でした。

 平成3年に「EYEFORM-21」という眼鏡フレームのオーダーメイドシステムを開発しました。大手メーカーが開発したレーザー光線による3次元測定装置で、お客様の顔のサイズを測定します。そして、パソコンで画像データを処理、お客様の好みに合ったフレームのデザインを設定し、データを同社に送ります。そのデータを基にセルフレームを加工するので、お客様の顔にピッタリ合う、その人だけのセルフレームが作れるシステムです。この開発では、青山社長は大学生でしたが、会長と一緒に開発に携わっていました。

 その他にも加工専用のCAMや社内のシステムも青山会長、青山社長が独自で作られています。正に眼鏡づくりの先駆者青山彦左衛門の挑戦するDNAを受け継いでいると言えます。

マシニングセンタによるセルフレーム加工

 昭和55年11月に機械色が真赤なマツウラの立形マシニングセンタ「MC-500V1」を2台導入。セルフレームの加工をマシニングセンタで行ったのは同社が福井県内で初めてでした。この機械の加工プログラムを青山会長がDOSの
パソコンを使って開発しました。その後昭和63年に横形マシニングセンタ「MC-450H PC11」を導入。この機械は4軸加工が行えるのでデザインの複雑化への対応が容易になり、またパレットが11面付加されたシステム機なので夜間無人運転による生産性向上も実現しました。

 平成17年には更なるデザインの進化に対応すべく5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-35V」を導入しました。平成24年にも「MAM72-35V」を導入し2台の5軸加工機が稼動しています。「5軸加工機により、どのようなデザインのセルフレームでも加工出来るようになりました。デザイナーがより自由なデザインが可能となり、当社のブランドをMAM72は支えています」と青山社長。5軸加工データを創出するCAMシステムも青山社長が独自で作られ、現在も日々進化しているとのことです。

自社ブランド「Factory900」

 眼鏡業界は分業化が確立されており、同社も長年OEM生産に従事していました。OEMの壁を破り自社ブランドを作りたいと決意し“XELF”というブランドをつくり販売を開始しましたが、現在はほとんど販売していません。新たな転機になったのは、他業種で会社勤めをしていた青山会長の三男青山嘉道氏の平成12年の入社でした。青山嘉道氏が中心となり新ブランド「Factory900」の強化を図り販売に打って出ました。「Factory900」の意味は、文字通り“工場番号900”です。眼鏡業界で工場番号の割振りをした時に同社の番号が900であったことが由来です。そして、青山嘉道氏はゴーグルタイプの斬新なデザインを作りだしました。この加工には5軸加工が不可欠です。タレントの宮川大輔さんが、このブランドの眼鏡を着用されて話題となっています。

 自社ブランド眼鏡の販売は、大きな展示会に出品して、直接販売店との接触から始まります。同社も、東京ビッグサイトで開かれるアジア最大級の眼鏡国際展示会IOFTに出品して3年連続で各部門賞を受賞、3年目にはグランプリを獲得するなど着実に販売を拡大しています。

パリ国際眼鏡コンクールでグランプリ受賞

世界の眼鏡メーカーが参加する国際眼鏡見本市「SILMO(シルモ)2013」が昨年9月にパリで開かれました。デザインの創造性や技術革新などで優れたものに授与される「シルモドール」という賞があり、そのサングラス部門で同社の「fa-1111」がグランプリを受賞しました。このグランプリは眼鏡界のアカデミー賞とも言われ、眼鏡界では最高の栄誉ある賞とされています。受賞眼鏡は、アセテート材の丸型のフロント枠の上下部分が前方に折り曲げてありレンズは丸型です。見る角度によりフレームの印象が変わる独特なものです。「シルモドールに3回目の出品でグランプリが取れました。世界の頂点の賞を頂き大変嬉しく思っています。しかし、この賞に甘んずることなく更なる挑戦を進める為に経営を現社長にバトンタッチしました。また妻と結婚する時に“世界一の眼鏡を作りたい”と語り、それが実現できました」と笑顔で語る青山会長です。

 同社は、常に新しい技術に挑戦し実現していますが、その過程には大変なご苦労があったと思います。しかし、その苦労が今回のグランプリに結実したのではないかと思った取材でした。

会社情報

会社名
青山眼鏡株式会社 様
本社
〒919-0326  福井県福井市半田町9-8
TEL
0776-38-0003
FAX
0776-38-4433
代表者
代表取締役会長 青山 恭也
代表取締役社長 青山 陽之(たかし)
創業
昭和12年
設立
昭和44年9月
従業員
17名
事業内容
セルフレーム眼鏡製造販売
URL
http://www.factory900.jp

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