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ユーザーを訪ねて

2021年秋号のユーザーを訪ねて

No.187

製品カテゴリ:H.Plus-300V.Plus-550

24時間稼働のマシニングセンタ

木下精密工業株式会社 様

 

今回のユーザーを訪ねては、名古屋第二環状自動車道の楠ICから車で3分の距離にある木下精密工業株式会社です。取材には木下朋美代表取締役社長と製造部の木下達也部長にご対応頂きました。同社は世界40ヵ国以上に製品を展開する工業用ミシン部品メーカーです。
「オートボビンチェンジャー」をはじめとするミシンの省力化装置では、グローバルでほぼ100%という驚異的な市場占有率を誇ります。木下社長は大手ミシンメーカーグループに勤務された後、同社に入社。同社では25年間経理や財務、労務に携わり、令和2年7月に3代目の社長に就任されました。木下社長のいとこにあたる木下部長はマツウラでエンジニアとして勤務した経歴があり、当時に培った知識は同社に設備されているマシニングセンタのオペレーションに活かされています。

工業用ミシンの個人営業から部品製造へ

 

同社の歴史は昭和23年、 木下社長の祖父である木下秀治氏が「木下ミシン工業」として創業したところから始まります。創業当時は工業用ミシンの個人営業を行っていました。航空機のエンジニアとしてのキャリアを持つ木下秀治氏は徐々に製造分野にも進出、昭和40年からは本格的な工業用ミシン部品の製造に乗り出します。
以降、同社では製造事業を堅調に拡大します。昭和50年には生産能力向上のため、創業地である名古屋市北区川中町から、現在の丸新町に本社を移転します。取り扱う部品の多様化に対応すべく昭和55年には第2工場も新設しました。

ミシン業界の変革と“第2の創業期”

「1990年代は工業用ミシン業界における転換期で、円高の影響によりミシンメーカー各社は製造の中心を国内から海外に移しました。それに伴い当社でも国内の需要が減少し、海外生産の是非についても検討を重ねました。しかし、今後も競争が激化するであろう海外での部品生産においては、当社の独自性を見出す事は難しいと考えました。日本国内に腰を据え、日本でしかできない、付加価値の高いモノづくりに取り組む方向に舵を切りました」と当時を振り返る木下社長。従来の量産体制から多品種少量・変種変量生産へシフトしていくため、マシニングセンタの設備増強を目的とした第3工場を平成2年に新設しました。また、航空機部品や一般産業機器など、工業用ミシン部品以外の分野にも積極的に進出したこの時期を、同社では「第2の創業期」と位置付けています。

ファーストワン・オンリーワンの技術を誇る縫製の省力化装置

国内に軸足を置くことに決めた90年代以降、同社では独自性の高い製品を立て続けに世に送り出します。ボビン交換を自動化する「オートボビンチェンジャー」、下糸の残量を自動的に検知する「下糸検出装置」、縫い目の目飛びを検知する「目飛び検出装置」などは同社が世界に先駆けて開発したファーストワン・オンリーワンの製品です。その高い技術力が評価され「発明大賞」や「ものづくり日本大賞」など数々の賞を受賞。また木下社長の父である木下治彦代表取締役会長は、これらの製品の開発に尽力した功績から、平成30年秋の叙勲において旭日単光章を受章しました。令和2年7月には同社の創業以来初の女性社長である、現任の木下社長が就任されました。コロナ禍の閉塞感を社員が一丸となって打開するため、社内の雰囲気を一新する意味での世代交代でもありました。

“目に見えない精度”を叶えるマシニングセンタ

同社が設備した初のマツウラ製品は汎用フライスのVC-1800 です。昭和45年頃に設備された機械ですが、50年近く経過した今も現役で稼働しています。その後、多品種少量生産への対応を強化する為、昭和55年に立形マシニングセンタMC-500V1 を設備しました。「工業用ミシンの部品製造には高い精度が要求されます。特に布に触れる部品は非常にデリケートなため、当社では定量化できない“目に見えない感覚的な精度”も重視します。高精度な点とコンパクトなサイズ感が当社のニーズと合致したためMC-500V1 の設備に至りました」と木下社長は振り返ります。木下部長も「マツウラに対する当時からの私のイメージは“高精度・長寿命”。剛性もしっかりあり、寸法が出ないなど精度に関するトラブルも起こしたことはありません」とマツウラの製品を評価します。「当時からお世話になっているマツウラの営業担当やサービスマンの対応も良く、加工の課題点を相談すると答えに導いてくれることもあります。そのため当社ではマツウラ以外によそ見せず、永くお世話になっています」と木下社長。その言葉どおり同社では平成30年までに立形、横形合わせて累計25台のマツウラ製マシニングセンタを設備しています。特に平成28年以降はV.Plus-550 や、多面パレットを搭載し24時間稼働に対応したH.Plus-300PC5、H.Plus-300 PC11 といったマシニングセンタを順次導入し、残業時間を2/3に削減しました。令和3年末には5軸制御マシニングセンタの最新モデルであるMX-420 PC10 の導入も控えています。

新規分野の開拓と女性が活躍できる職場づくり

「モノづくりにおいて多品種少量・変種変量生産への対応は、日本的な付加価値の創造に繋がると考えています。今後、当社では主力であるミシン部品以外の分野にも積極的に展開していく予定です。エネルギーや鉄道などの新規領域の開拓に向けた設備投資を進めます。また従来から注力している航空機部品も今後需要の回復を見込んでいます。柔軟性をもって付加価値の高いモノづくりに取り組んでいきます」と木下社長。また同社は女性経営者の目線から働きやすい職場づくりを推進しています。令和元年には女性の働きやすさを評価する「あいち女性輝きカンパニー」に推薦されました。「働きやすさの観点からマツウラのマシニングセンタには非常に助けられています。ミシン部品は非常に繊細で、細かい仕上げなど、女性の緻密さが活きる場面は多いと考えます。にもかかわらず、労働環境へのイメージなどから製造業は全体的に女性が集まりにくい。作業者の負担を軽減しクリーンな環境整備を進めることで、優秀な女性の雇用を促進し、将来的には女性スタッフのみで運営する製造拠点を作る事が夢です」と木下社長は今後の展望を語ります。


同社に設備されたマシニングセンタは赤色に統一されています。初期に導入したMC-500V1 を踏襲する形で、近年設備したモデルも赤の特装色を採用してきました。しかし近く設備予定の最新モデルMX-420 PC10 は標準色のブルーを採用。「赤もインパクトがあるが、ブルーのスッキリとしたイメージが良いです」と木下社長。女性目線での職場環境づくりは、製造業が抱える人手不足解消の糸口になるかもしれません。インタビューと工場風景の動画は、記載のQRコードを読み取り、ご視聴頂くことができます。また、当社ホームページでも公開中です。ぜひご覧ください。

会社情報

会社名
木下精密工業株式会社 様
本社
〒462-0063 愛知県名古屋市北区丸新町201番地
TEL
052-902-3331
FAX
052-901-2757
役員
代表取締役会長 木下 治彦、代表取締役社長 木下 朋美
設立
昭和23年(1948年)
従業員
70名
事業内容
工業用ミシン部品、航空機部品などの製造
URL
木下精密工業株式会社

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