No.36 米国の底力を知る 1988(昭和63)年7月号掲載


 この6月半ばに米国へ出張し、最近の米国景気の力強い底力に圧倒される思いがしました。
前回の出張は昨年末。
クリスマス景気も今ひとつ、そして1988年の景気も大統領選のため可能な限り好況を持続させようが、 悪くすると選挙半ばに失速するかも、との見方でした。

 それが昨今の米国景気は一転して強気。
ドル安を大きなテコにして、米国の輸出が大きく伸びそれに伴って設備投資が本格化したこと。
今まで景気の牽引車であった個人消費も、日本を含めた海外企業の米国現地生産化に伴う 供給能力の向上と、消費マインドの変化で落着き、思いのほか健全な姿勢になっていることなどからです。 その中で私が驚いたのが、オハイオの某工場で聞かされた日本と米国とのコスト比較論でした。
例えば、賃金は30%安く、電力料は1/5ぐらい、ガソリンは1/4、食費が1/5から1/6、 そして住居費は桁違いに安い。
そして「これだけコスト格差で有利な米国が、本気で競争を仕掛けたら日本は一溜まりもないだろう」 と彼らが思っていることでした。
米国が日本の最も得意とする産業や製品に的を絞り、品質や性能をあげて競争を 仕掛けてこないという保証はなく、むしろその兆しが米国はオハイオ生まれの、 ホンダ車の対日輸出に象徴されています。
また米国の一部の人々は「もう日本との貿易戦争は終わりに近づいた」とまで公言してもいます。

 円の高止まりから、円安ドル高に振れている今日ですがもし、 さらに大きく円安に振れたとき日本は、輸入インフレが始まり比較的安定している素材価格や、 諸物価にはねかえって上昇を続け、日本製品の価格競争はさらになくなります。
そしてこの動きが日本の立場を根幹から揺るがすことになりかねません。
今こそ私達は、米国の底力が想像すらできないほど奥深く、大きいことを再確認し、 あわせて独自の方策をはやく確立すべきときでありましょう。

 そして私達がめざす未来技術に生き残りを求め、世界市場に通じるオリジナリティ溢れる 独自商品の開発を、いそがねばならない、そんなときが今日ではないのかと思います――。