No.51 茫洋とした初夢 1991(平成3)年1月号掲載


 私が昨年末いただいた何通かのクリスマスカードに“目先だけでなくもっとおくにある大きなウネリ にお互い注目したいね、少なくとも10年先を見通すような---”旨の言葉が書かれていました。

 これらのカードをみたとき、日本にいる私に世界の動きや流れは既に変化しているんだ、 見誤ってはいけないよ、と忠告されているようでした。
この言葉はまさに今までのイデオロギーがことごとく否定されつつあり、21世紀にむかって 世界の人々が共有できるイデオロギーを模索するときなのでしょう。
ソ連を中心とする社会主義国が信じていた共産主義が崩壊しつつあり、また米国を含む 西側メンバーの民主主義や自由主義も必ずしも満足できるものではないようです。

 これを促進しているのが情報力と経済力のグローバリズムであり、ボーダーレス化へ 急速に進んでいるという事実です。
サハラ砂漠でもパリのシャンゼリゼでも、望めば同じ情報を瞬時に得ることができますし、 共通の価値観を持つことも可能になりました。
そして欧州共通通貨にみられるように、基軸通貨の米ドルをも含めて各国の通貨に変わるものが 求められつつあり、また一方、ソ連のペレストロイカは現在の世界地図を第1次大戦前に 引き戻すほど強力なインパクトで民族主義運動が東欧諸国で表面化しています。
いまひとつ、私達は地勢学的な物の考え方をしなければならないということです。
米と加とのフリートレード、EC統合から新しいヨーロッパへの動き、アラブ世界のあり方等 を含めて、地球上に我が日本がどの位置にいるのか、その事実を直視しなければなりません。
アジアの中の日本も最近では環日本海時代といわれるのも、わかる気がします。

 最後に忘れてならないのは、宗教観それもその生誕から未来指向までを歴史的な側面から、 その栄枯盛衰の流れを理解したうえで、これからの10年を、そして21世紀をどう生きるか 求められている気がします。
そしてこれらのあらゆる相反する力を容認しつつ“地球は一つ”の流れの中に如何に同化 させるのか、これが人類の知恵と努力にまたねばならないと思います。
どうやら世界は私達に根本的な変化を求めているのでしょう。

 それにしても今年の初夢は、つかみどころのない茫洋とした、一種の不安がよぎったそんなものでした。