No.71 円高メリットを今こそ! 1994(平成6)年5月号掲載


 6ヶ月ぶりに、この3月25日から約2週間、欧州6ヶ国を駆け足で訪問してきました。
この海外出張で、今回の円高が日本商品の国際競争力を著しくなくしてしまったことを知り、 私は愕然としました。
特に日本が最も得意としているハイテク分野、ロボット、半導体や自動車、電器製品等も、 すでに欧州製品に取って替わられており、このまま1ドル100円近くの円高が続く限り 大変なことになると思います。

 スウェーデンは社会福祉費用をカットして全体のコストを下げていますし、 旧西ドイツは東ドイツや東欧諸国を取り込んでコストを引き下げさせており、 一説によれば国家公務員の就労時間を1週40時間へ戻す動きがみられ、国際競争力を取り戻しつつあります。
またリラ安のイタリア、ポンド安のイギリスも輸出競争力を回復して景気が戻り、 街角には活気が出ています。
聞く所によればアメリカもこの10年間に、リストラが徹底的に行われて1960年代まで、 賃金コスト等を引き下げることに成功。
往年のような繊維産業や木工産業が復活して、活況を呈している由です。

 世界はこうして景気が上向きつつあるにもかかわらず一人、日本はこの円高のメリットが うまく作用せず、不況に喘いでいる様は考えさせられます。
国民生活は、相変わらず世界のトップクラスの収入を得ながらも満足できず、 従来通りのベースアップは年中行事化しており、それはガソリンがアメリカの4倍、 牛乳がイギリスの3倍、主食の米に至っては10倍を超えるなど、何をかいわんやです。
1ドル100円という、極めて強烈な円高のメリットを消費者に直結させて、 内外価格差の解消を一日も早く実現させ、日本の総体的なコストを引き下げる政治が行われない限り、 加工立国で生きていかざるを得ない我が国の将来は悲観そのものです。

 今や世界は賃下げ、コスト引き下げの時代の観ある中で、我が日本丸だけが 特別な動きをしているような気がしてなりません。
そんな意味では、私達の企業のみならず日本全体が、システムを見直しコストを引き下げる 一番の好機が、今なのではないでしょうか。