No.8 基本を忘れて何が― 1983(昭和58)年11月号掲載


 私たちは仕事がら最先端技術分野で、毎日仕事をしているとおもわれますが、 内心はそれほど最先端技術を、意識していないようです。
しかし、FMSだFAだとワイワイ騒がれると、ついその気になるもの。
勿論、いま私達がタッチしている仕事は、全くFMSやFAに関連がないのかと言われますと ”いや―”と言わざるをえないのですが、それにしても最先端技術産業などと言われますと少々、 戸惑うものです。

 私たちの工場では、8年前に機械加工工場で、約40名の社員が作業をしていたのが、 現在では20名弱、生産高は8年前に比べて10倍以上になり、また1人あたりの生産性は 20数倍にはね上がりました。
その要因は、NC化、MC化への設備更新と合理化ですから、 結果を見ればFA化したと言うべきでしょう。
しかし、最近の20名弱の社員のなかには、10年以上の熟練社員も、ここ数年に採用された社員も いるわけですが、NCやMCの操作ができるということだけで”一人前”という感覚があります。
とくに無人化運転をするようなFMSやFMCになってきますと、その感覚も解らぬでもないのですが、 ちょっと気になります。

 それは、刃物の回転数やテーブルなどの送り速度を決める際、 あらかじめプログラムしてあったり、ソフトウェアが事前に組み込まれてあるため、 切削加工の最適条件を肌でじかに感じない熟練社員が育ちつつあるからです。
いかにNC工作機械でも、対話型で装備したマシニングセンタでも、身体で体得している社員と 押しボタン専門の社員とでは、大きな開きがあると思うのです。
日本の技術は、かつてアメリカやヨーロッパを、お手本とし、目標として伸びてきましたが、 今やその目標もありません。
ヤスリがけが満足に出来ない社員や、キサゲ作業を知らない社員など、工作機械の基本や 原点を知らない、ないしは考えようとしない風潮が多くなってきていることでもわかりましょう。

 いま、西ドイツやスイスが日本に追い抜かれているといわれていますが、 わが日本も西ドイツやスイスと同じような道程を歩むような気がしてなりません。
考えさせられるこの頃です。