トピックス

ユーザーを訪ねて

2017年1月号号のユーザーを訪ねて

No.168

製品カテゴリ:MAM72-35V

阪神淡路大震災を乗り越え、神戸から世界へ精密機械加工プロフェッショナル企業

株式会社田中鉄工所 様

 今回のユーザーを訪ねては、JR兵庫駅から徒歩5分の株 式会社田中鉄工所を取材いたしました。取材には田中祥靖 社長と田中宏和専務にご対応頂きました。創業は昭和13 年で田中社長の祖父が創業され、田中社長は3代目になり ます。田中社長と田中専務はご兄弟で、妹さんも同社で働 いています。創業以来、神戸市の大手重工業の部品加工を 行ってきました。現在マツウラの5軸制御立形マシニング センタMAM72シリーズが6台と立・横形マシニングセン タ10台、そして3次元測定器2台で産業用ロボット部品製 造を中心に操業しています。MAM72が設備されている工 場の一角は、床と柱がMAM72で使用されている機械色に 塗装され、マツウラの社員として大変嬉しく思いました。

阪神淡路大震災を乗り越えて

 「創業以来工場は、神戸市長田区にありました。平成7 年1月17日の阪神淡路大震災で工場は全焼し、工場及び 機械が全て無くなってしまいました。しかし、須磨区に あった工場と休眠設備(古いマシニングセンタ2台)をお 借りし、新規にNCフライス3台を設備して震災後1週間で 立ち上げることができました。物流も止まっていました が、納入先が近隣であったので納品は無事行えました。そ して、7月には元の場所に工場を建設し本格操業を開始す ることができました。その後、工業団地への誘致もありま したが、平成13年に現在の兵庫駅前に移転しました。直 ぐ横をJR貨物が24時間走っていますので、24時間機械 稼動でも近隣から騒音によるクレームはありません。また 従業員も駅に近いので通勤には便利な環境です」と田中社 長。

24時間変種変量生産対応

 大手重工業では当初自動車産業向けの溶接ロボットが主 流でしたが、半導体製造用のウェハ搬送用ロボットの増産 が始まりました。それに伴い、ジャスト・イン・タイム (JIT)の生産方式を採用し、関連会社に対応を求めまし た。

 「毎日1個、2個の生産を行い、納品していました。し かし、機械はその度に段取り変えを行う必要があり、夜中 まで仕事をしないといけない状況でした。立形マシニング センタにインデックスを付加し5面加工を行っていたの で、長時間無人運転出来る5軸加工機を検討しました。平 成19年に40面のパレットを装備したマツウラの5軸制御 立形マシニングセンタMAM72-25Vを設備しました。ま た平成22年に同じく40面パレット装備のMAM72-25V を設備し、変種変量生産方式を確立していきました」と田 中専務。

 その後、平成23年にMAM72-35Vを2台、平成27年と 平成28年に追加設備されました。合計MAM72は6台、 パレット数は208枚となります。現在4,000種類の部品 を毎日1個・2個生産を行っています。素材棚を見ると、 各サイズに分けられたアルミ板が整然と並べられ、注文に 合わせて即座に加工できる体制が取られています。

医療用ロボット部品生産

 「米国が開発した手術用ロボット“ダヴィンチ”の特許 が平成27年に切れ、国内ロボット各社が、その分野への 参入を競っています。当社の仕事先も開発に力を入れてお り、日々試作加工を行っています。試作なので個数、納期 は厳しいですが、今後の量産への期待もあるので最善を尽 くして対応をしています。日本は国策としてロボット・医 療分野の国際競争力アップを掲げています。MAM72は、 正にその実現に向けての設備投資なので、“ものづくり補 助金”の申請を行い採択されました。中小企業として“も のづくり補助金”は大変助かり、当社の生産革新を推進で きました」と田中社長。

 更に医療分野への進出を考え、医療機器・体外診察用医 薬品の国際規格であるISO13485取得の準備も始めてい ます。

航空機関連部品への準備

 日本国産ジェット機MRJの生産が発端となり、日本の 様々な地域が航空機関連部品生産拠点に名乗りを上げてい ます。

 「神戸市の大手重工業の敷地内にMRJの翼を製作する 会社が進出し、4メートルの翼を作ることになりました。 翼には多くの部品が必要になり、アルミ材を5軸で加工が 出来る当社の技術で参入できると考え、航空宇宙の国際規 格JIS Q 9100を平成27年4月に取得しました。MRJの 量産が遅れていますが、今後本格的量産になれば、当社の もう一つの柱にしたいと期待しています」と田中社長。

神戸市にある利点

 「神戸市近郊には大手重工業の造船所があり、船の大型 部品を作る企業が多く、当社のようなハイテク産業を対象 にした企業は少ない地域です。もし、当社が京都にあれ ば、ハイテク大手企業が多数あり、精密な部品を作る中小 企業がひしめく中で、とても仕事が取れなかったと思いま す。アルミ材の精密加工を行い、仕事先に1時間で納品に いける神戸市で操業することで、当社は事業を79年間継 続できたと思っています」と田中社長。

 平成21年には“神戸発・優れた技術”として同社は認 定されています。この認定は、神戸市と(財)神戸市産業 振興財団が神戸市内の中小製造業で全国的に高いシェアを 占める製造している企業を対象に認定するものです。同社 の技術力が地域・行政からも高く評価されている証です。


 「毎日ネットで注文が入ってくる。また個数変更で対応 を直ぐ求められることは日常茶飯事です。これにどう対応 していくかが当社の課題です。『モノをつくる前に人をつ くる』、企業は人なり・・・人の能力を最大限に発揮させ るのが21世紀も勝ち続けるマネジメント」と田中社長は 語っています。

 また、同社の工場を見学すると、多くの女性社員が、機 械加工後の仕上げ作業をされています。例えば部品のバリ 取りやアルマイト工程に送るためのマスキングテープ貼り などです。機械加工だけでなく、この様な手作業まで含め て変種変量生産に対応していることに大いに感銘を受けた 取材でした。

会社情報

会社名
株式会社田中鉄工所 様
本社
〒652-0898  兵庫県神戸市兵庫区駅前通2丁目2-3
TEL
078-579-8620
FAX
078-579-8622
代表者
代表取締役 田中 祥靖
創 業
昭和13年
設 立
昭和37年
従業員
26名
事業内容
産業用ロボット部品及び医療機器関連部 品などの精密機械加工 取扱品目:産業用ロボット関連部品、 医療用機器関連部品、航空機関連部品、 原子力プラント部品
URL
http://www.tanaka-iron.com/

BACK NUMBER & CATEGORY

Page TOP