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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.141

製品カテゴリ:MAM72-35VMAM72-63V

5軸加工、3 次元アルミ加工の試作部品製作に特化する

株式会社井上模型製作所 様

 今回のユーザーを訪ねては、JR大阪環状線天満駅近くの住宅街にある株式会社井上模型製作所を取材しました。
 取材には社長の井上和宣氏と常務取締役の井上佳宣氏に対応頂きました。
 同社は昭和47年に井上和宣社長が創業され、大手電気メーカーの樹脂による試作用モデル製作を主力に行ってきました。
 現在は5軸加工を中心に難形状の試作加工を行っています。工場は本社工場と北工場の2工場で、2工場とも住宅街にあり約50 坪の敷地面積です。

 昭和54年にマツウラの立形マシニングセンタ「MC-710V」を設備され、それ以後多数のマツウラのマシニングセンタが設備されています。
 「今までは、待っていれば試作の仕事が入ってきた。しかし、今は受身では仕事が増えず、攻めの経営方針に大きく転換しました。現在実務は井上常務が担当しています」と井上社長。
 井上常務は創業の年に生まれ、現在37歳です。
 「工業高校電子科を卒業後、建設業に従事しました。24歳の時にバブル崩壊で建設業が斜陽になり、社長に相談したところ“うちにはいるのなら入ってもええで”の一言で入社しました。しかし、建築では1mm単位、工場は0.01mm単位と精度の違いもあって 技術が身に付かずに苦労しました。3年間の現場経験は大きな財産になっており、技術の気持ちが分かる営業が出来ています」と井上常務。

5軸加工機で企業体質の変革

 同社で稼動しているマツウラの立形マシニングセンタは、MC-600VF、MC-510VF、MC-510V、MC-800Vが4 台、と合計7 台が稼動しています。
 家電中心の試作業界は、樹脂加工が主で、複雑な形状は分割して、接着する方法で作られ、3軸加工機での対応が可能でした。
 同社も3軸加工機で対応していましたが、主力大手メーカーがアジアへの生産拠点を移し、空洞化が進行する中で、井上社長の決断で5軸の複合旋盤の設備を導入。
 それを前後して入ってくる仕事が樹脂から金属に変わってきました。そして、平成15年にマツウラの5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-35V」、平成18 年に「MAM72-63V」を設備されました。
 「MAM72の導入で、会社の可能性が大きく広がりました。MAM72は、当社に求められているものがかなり高いレベルで実現されている機械です」と井上常務の言葉です。

試作製作に専念する

 「何度か試作だけでなく部品加工への進出も検討しました。しかし、部品加工では常にコスト削減が求められ、同じ製品を作っても試作品の方が良い価格を頂く事ができます。社員も部品加工で付け替えの仕事を1週間もやると嫌になってくるとの声もあり、また50坪の工場には材料のダンボールが10箱くると邪魔になるような環境です。結局何回かチャレンジしたんですが一度も部品加工へは参入していません」と井上常務。
 「ある人から、“井上さんは50坪の中で行えることを考えた結果、今の井上模型になっているんでしょうね。もし郊外へ出て行ったら、他社と同じ様に3軸機を並べて効率の良い仕事のみをする普通の会社になっていたでしょう”と言われ、そうかもしれないなあと感じました。中小企業には何らかの制約があります。狭い工場で事業をしている制約が当社を他社と違う道へ伸ばしたと思います」と井上常務。

 以前から行っていた家電製品でも変化があります。材料は本番製品と同じものを求められています。
 例えばお鍋の試作であれば以前は形状のみの確認でしたが、実際に研究所で製品を作って鍋の料理を行い、その雰囲気まで確認するとのことです。
 光造形等では外見及びモックアップ確認、切削した試作部品はワーキング、実験用となっています。

益々複雑化する試作製品

 ガス機器の試作も手がけています。
 「ガス機器は一酸化炭素中毒事故もあり、メーカーも安全に力を注がれています。コンピュータシュミレーションだけではなく実機での試験もされて安全を追求されています。それに求められる試作部品は、鋳物では精度が足りず正確な試験が出来ないと5軸加工機を使った高精度の切削品になりました。3軸機では要求される精度に答えられない加工だと思っていましたが、今はMAM72の5軸加工が有りますので如何なる加工も出来るようになりました」と井上常務。

 また変わった試作では、ブラックバス釣りに使われるルアーの試作も行ったことがあります。通常ルアー職人が作る木製のルアーですがそのモデルから3 次元データを作り、そのデータを基に実際のルアーを作ります。
 そのルアーで実際に釣りを行い釣れたルアーの製品化は、アナログの技術とデジタルの技術の融合でした。

 更には形状指定のない試作も行っています。お客様が展示会で新しい機能部品を展示したいので、その部品を組み込むためのカメラに似た部品を作ってほしいとの依頼があり、デザインも含めて試作品を作りました。
 機能だけが伝えられ、デザインまで含めて得意先様が納得する物を作る事が出来る技術力に同社の懐の深さが見てとれた仕事でし た。

試作製作を支えるCAD/CAM力

 同社では、14人の作業者がいるのですが、21台ものCAD/CAM が設備されています。
 「通常効率を求めれば分業化を行いますが、我が社では、分業化は挑戦する気持ちを摘んでしまうと分業化はしない方針に決めました。新人が先輩のように5軸加工に挑戦したいと思えばそれができる環境を整備して行くことが重要です。自分の頑張りしだいで上を目指せるのでヤル気のある社員は技術の上達も早いです」と井上常務。
 5軸加工と並んでお客様に高く評価されているのがCAD/CAM 力です。どうやって削るのかさえ分からないような難形状が同社の力の見せ所です。
 また、特長的なところで、デザイナー専門学校出身の社員を多く採用されています。
 基本的にデザイン系の感性があり、その基礎がCAD/CAM 力を高めるのに貢献しているといえます。

納期は最速を目指します

 会社の方針として「納期は最速を目指します」と掲げています。
 “納期を厳守する”との目標ではなく、“最速を目指す”ところに試作にかける同社の姿勢を強く感じました。
 グローバル時代において、メーカーは開発競争で他社より1秒でも早く市場に出さないと負けてしまい、また不完全な製品を出せばリコールで莫大な費用が発生します。
 そのためにも完全な試作品で完全なテストを行い、速やかに世に発表する必要があります。試作品が最速で納品されることは、この競争に勝つ為にとても重要な要素です。
 「見積もりから納期は始まっています。この時代他社が5時間で加工できる物を井上模型は3時間で出来るなんて思いません。しかし見積もりのスピードや社内の手待ち等の無駄を徹底的に少なくします。納期に余裕は見ていません、トラブルがあれば納期に響きますが、常に最短納期を全社員が心がけています」と井上常務。

 日本は、開発競争で世界と競い合っています。
 華やかな開発競争を、支えているのが同社のような試作加工です。
 その技術力を支えるのに当社のMAM72が貢献しているのを取材して、改めて工作機械に携わる責任を強く感じました。

会社情報

会社名
株式会社井上模型製作所 様
所在地
〒530-0033 大阪府大阪市北区池田町1-43
TEL
06-6351-9228
FAX
06-6352-9558
Email
mokei@kk.iij4u.co.jp
代表者
代表取締役 井上 和宣 氏
創業
昭和46年
設立
昭和55年
従業員
21名
事業内容
各種工業用モデル製作
URL
http://www.inouemokei.co.jp/

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