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ユーザーを訪ねて

2018年1月号号のユーザーを訪ねて

No.172

製品カテゴリ:MAM72-35V

設立平成25年と歴史は浅いがガスタービン・ブレード製作で発電事業を支える

加古川ブレード株式会社 様

 今回のユーザーを訪ねては、JR加古川駅から南東に車 で約10分の距離にある加古川ブレード株式会社を取材い たしました。取材には岡田功社長と生産技術部松岡伸介主 任にご対応頂きました。

 「当社の設立は平成25年と若い会社です。しかし、事 業としては歴史があります。当社の前身は昭和48年に創 業したブレード工業株式会社です。私もこの会社でブレー ド製作に携わっていましたが、平成22年に社長高齢によ り廃業となりました。その事業を長野県の会社が引き継ぎ ましたが、平成23年に撤退が決まりました。事業を継続 して欲しいとその会社から要請がありましたが、創業する 勇気はありませんでした。しかし、一緒に働いていた仲間 や、妻の後押しもあり創業を決意しました。引き続きブ レード製作の仕事を確保し、また工場建屋と機械をそのま ま借りることで平成25年に事業を開始しました」と創業 当時を語る岡田社長。

 同社が製作しているブレードは、大手重工業が手掛ける 発電用のガスタービン・ブレードです。ガスタービンは、 「ガスタービンエンジン」とも呼ばれる、内燃機関の一種 です。高温の気体の流れによりタービンを回転させること で、動力または推進力を発生させることができます。発電 に用いられるメリットとしては、小型で高出力が得られる ことが挙げられます。

タービンブレードの試作

 「昭和50年ごろ、大手重工業は発電用のガスタービン 研究を始めました。前身であるブレード工業では大手重工 業研究所からの依頼で研究翼の製作を行っていました。私 も20年ぐらい研究翼の製作に携わってきました。研究の 為に1/10に縮小したものや、ガス発電や水力発電などに 使われる様々な形状のタービンブレード製作を行ってきま した。昔は倣いフライス加工機を使ってゲージに合わせて 作っていましたが、その後はNCフライスを使って加工し ました。当時はブレードの形状は2次元の図面に記載され た点群をつないで加工していましたが、現在では3次元 データが支給され加工しています。ブレード工業時代から 研究翼の製作によって築いてきた信用は創業間もない当社 にとって大きな財産です」と岡田社長。

 「材料はステンレス系で、取引先から支給されます。ガ スタービン・ブレードには静翼と動翼の2種類があり、 ローター部の中に使われるのが動翼で、ケーシングに入る のが静翼です。動翼は熱を持つところに使われるために耐 熱性に優れた材料が使われていますが、どちらもステンレ ス系なので難削材です。加工に使用する工具は超硬を使用 しますが、磨耗が激しいので精度保証するために度々3次 元測定機でブレードの形状を計測しています。形状と大き さも様々ですが、1.3mの大型ブレードもあります」と松 岡主任。

NCフライスが現役で稼動

 「工場には10台のNCフライスと6台のマシニングセ ンタが稼動しています。ステンレス系の材料は切削速度が 上げられないので1度の加工に2時間ほどかかります。そ れで1人で3台の機械を担当しています。タービンブレー ド加工では一般的な部品加工とは異なり多くの工具を使わ ないので、NCフライスが活躍しています。加工方法はN Cフライスのテーブル上に4軸テーブルとテールストック が対で載っており、その間に加工ワークを固定してブレー ドの形状に加工していきます。荒加工をNCフライスで行 い、仕上げ加工をマシニングセンタで行っています」と松 岡主任。

5軸制御立形マシニングセンタMAM72-35Vを設置

 「当社と同じ様にガスタービン・ブレードを製作してい る東京都青梅市にあるコスミック社を訪問しました。この 会社はマツウラのMAM72-35Vを複数台設備して、当社 と同じタービンブレードの加工を行っていました。5軸加 工機で、しかも長時間無人運転でタービンブレードの加工 している現実を目の当たりして衝撃を受けました。創業間 もない当社に設備資金も無く導入は無理と諦めました。そ の後モノづくり補助金を申請し、承認が取れれば設備しよ うと考えていましたが、残念ながら承認は取れませんでし た。しかし、会社の将来を考えるとMAM72は絶対に必要 と決意し、平成28年10月に導入しました。工場の一角に 十分な基礎工事を行い、空調完備した専用の部屋に設置し ました。更に5軸加工用のプログラムが作れる専門の社員 を雇用して日々技術力を高めています。基礎工事は2台分 してあるので、確実に実績を上げ、2台目のMAM72が 早々に設置出来るようになりたいと希望を持っています」 と岡田社長。

ライバルはインド

 「当社の強みは短納期と品質です。研究所との長年培っ てきた信頼関係により、当社に研究翼製作の依頼がありま す。しかし、量産品の製作はインドに移ってきています。 以前は中国でしたが人件費高騰などの理由によりインドが 注目されています。インドからの輸送費などを含めても当 社より3割安い状況です。インドは欧州とは近い関係にあ るので、スイス製の専用機を設備しているとの話がありま す。また今後インドは益々発展していくために電力供給が 不可欠なため、大手企業がガスタービン製作にインド進出 しているとも聞いています。当社は、そんな厳しい経営環 境で生き残る為に、更に短納期と品質に磨きをかけていく しかないと思っています」と岡田社長。

将来展望

 現在、岡田社長の長男である岡田祐一氏がMAM72のプ ログラマーの下で日々勉強しています。

 「息子は大手電力会社に勤めて独立していましたが、縁 あって当社に入社することになりました。しかし、直ぐ入 社しても仕事は出来ないので他社での修行を言い渡し MAM72-35Vを設備しているコスミック社で経験を積ま せました。息子が入社したからではないですが、当社の将 来を考えるに何かを変えないといけない。その為の方向性 を見出すのが社長の役目と考えています。その意味で MAM72の設備により、長時間無人運転と5軸加工との方 向性が示せたと思っています。自動車もEV化が進んでお り、益々電力供給が必要な時代になっていきます。更にイ ンドやアフリカ諸国の発展途上国では大型ではなく小型の ガスタービン発電の需要があります。それにはタービンブ レード製作は不可欠であり、将来に向け継続出来る事業で あると考えています」と岡田社長。


 ライバルはインドであるとの岡田社長の言葉を聞いて、 モノづくりのグローバルシフトのスピードに改めて驚きま した。またMAM72のコンセプトが同社の経営方針に役立 てたことはメーカーとして大変嬉しく思った取材でした。  更に、取材で語られたコスミック社は平成18年7月号 のマツウラニュースで紹介しており、不思議なご縁を感じ ました。

会社情報

会社名
加古川ブレード株式会社 様
本社
〒675-0025 兵庫県加古川市尾上町養田1533
TEL
079-421-5667
FAX
079-422-1539
役 員
代表取締役 岡田 功
創 業
平成25年1月
従業員
14名
事業内容
各種タービンブレード製造加工

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